走るとき、リズムを呼吸でとっていた。
腕の振りや足の動きではどうしてもうまくリズムがとれない。
それぞれでうまくいっても、全体がうまくいかない。
走るという行為は簡単なのになかなか難しかった。
呼吸はすべてをコントロールする。
だから、呼吸でリズムをとっていた。
もちろん「そのとき」は何も考えていなかった。
今だからそう想えるのだけど。
もっと真剣に取り組んでいたら違う結果が待っていたのだろうなあなんて…
後からなら誰だってどんな風にでも言えるもの。
一定のリズム、呼吸をとってうまく走れていたように思う。
いつか、だれかに言われた
「呼吸は、吸うことを意識するだけでいいんだよ。」という言葉を頼りに
吸うタイミングを一定にしていたように思う。
「吸えば必ず吐くんだから、」そんな風に言っていたような気がする。
誰だったんだろう。先輩か同期か顧問かアスリートか小説のなかか、思い出せない。
とにかく、何かを一定に保ちたいとき
意識するのは吸うこと、吸っていれば、必ず吐き出すのだから、ということ。
本を読んだり、映画を観たり、話を聞いたり、
そういうことを受身だとか消極的だとか考えていたのだけど、
見方を変えれば中に吸収しているときで、意識しないとできないことで、
きっときっと必要なものなのではないかなと。
いっぱいいっぱい空気を吸い込めば
いっぱいいっぱい吐き出さなければならない。
吸い込んだ(空気)とは違う(空気)を。
それには時差だってある、同じ量とは限らない、それは、わからないことだらけだ。
誰にもわからない。
だから、すこしくらい、自分だけは信じてみよう。大切にしてあげよう。
何かに変わるかもしれない。力を、くれるかもしれない。
卑屈になるまえに、自分を責める前に
すこしくらい、認めてみよう。