入社以来ずっと明るかった髪を一気に黒くしてみたり、
これまた入社以来ずっと決めていた定期預金を一度止めてみたり、
新しい香水にしてみたり、マツエクなるものをつけてみたり、
ずっと欲しかったジュエリーを思い切って買ってみたり、
「変わりたい」という思いを形にする方法をあまり持ち合わせていないから
お金だとか、物だとかで変えてみせようとしている。
それを滑稽だと笑う人さえいないのだから、
今がちょうどいいタイミングなのかもなと思う。
最近仲良くさせてもらっている先輩が
「こんな人になりたい」という登場人物がいるという小説を教えてくれた。
私はほんの少しだけ、期待をしながらあわててその小説を買ってきて読んでみた。
寝すぎて起きてしまった朝5時頃に(最近、寝足りるという現象を体感できるようになった)、
朝日をたよりに、さわやかな気持ちとわくわくする気持ちと一緒に、一気に読み切った。
読んでみたら、期待とは全然違って、いやある意味では上回っていて
私の思考の幼さにたいそう落胆し、もちろん先輩の考え方に共感できなくて、少し寂しくなった。
思考や思いに近づけているという自負に対して
現実は全く違うのだよと知らしめる小さな文字たちを少し憎く思ってしまった。
だからということでもないのだけれど、
私はとっとと今の自分から抜け出してしまいたいと思っている。
さなぎから蝶になるようなことはできなくても、ぱきっとどこかで変わりたいと思っている。
黒い髪も、いつもより多くお財布に入っているお金も、
新しく身にまとう香りも、長くなったまつげも、右手で光るルビーも、
どうか私に力をください。変わりたいのです。